2007年05月21日

「終わらない日常」 ◆日常◆

87章以降の話です。




放課後のドキ高。
関係者が理由も知らされずに講堂に集められてからしばらく経ち、今から一体何が始まるんだとブーイングも大きくなった所で、1人の少女がマイクを持ち、壇上に現れた。


『ええーッ?! 暴走Gカップの元生徒会長と、赤い悪魔が付き合ってるー?!

ハイ、と言う事で、ドキ高在校生と卒業生の皆様に集まって頂いて、インタビューをしようと開いた緊急企画です!!』

始まりの挨拶を聞いて、がっくりと頭を垂れ 座り込む人が、1人だけいた。
「またオマエの陰謀か、悠ーーー!!!」
緊急企画にされた当事者の1人、阿久津宏海である。

「何を今更。 あの時 幸運香を使ったのは宏海の意思じゃないか。」
「う、まぁ、そりゃ使ったが…」
「折角の間界アイテムまで使わせてしまったのだから、何か恩返しドッキリをしなくては、と思ってな。」
「せめてサプライズって言ってくれ!!」

『ハイそこ、私語は慎むように!』
「俺、当事者なのに?!」

『えー、春休みに元生徒会長と赤い悪魔が付き合い始めたと聞いた時は耳を疑いましたが…折角なのでここでお2人の友人・関係者にインタビューをしよう!と某氏の力も借りて皆様にお集まり頂く事にしました! でも、百手さんは暴走されると話が進まないので呼んでいません!!』
「そこは呼んでや…いや呼ばなくて正解だが!!」
 
『司会進行はこの私、大学行ったらサークルでは下っ端! 面白くないので毎週ドキ高で後輩を指導する、明石サマンサがお送りしまーーーす!!』
「毎週来んなよ!!」

『それでは早速インタビューに参りましょう。 トップバッターはこの方です。 どうぞ!』
「え? お兄ちゃんが付き合ってるのって、佐渡さんじゃなかったの?! お、お父さんに報告しないと!!」
「待て!! 早まるな伊舞!!」

『ハイ、次行きますよー、元もて四天王のこの方です。 どうぞ!』
「…百手、良かったな。 何か困った事があったら、俺で良かったらいつでも相談に乗るぞ。」
『ありがとうござまいした。 でも百手さんが相談するのは親友の吉下さんでしょう。 ハイ次!』
「俺の立場は?!」
「2人が付き合う事になって本当に良かったわ。 百手さんは気になって受験どころじゃなかったみたいだし… でもこれで今年は大丈夫ね。 阿久津くん、百手さんをよろしくね。」
『私としてはあなた方2人も気になる所なんですが…人が多いので次々と聞いてまいりましょう!』

「……私、お姉さまがあんなに楽しそうにしてる所 初めて見ちゃって…私じゃお姉さまをそこまで笑顔にするのは無理で…だから、だから、、」
「一口…」

「公衆の面前で、あそこまで矢射子先輩の犬になりきれる姿には完敗したが、でもいつかはオレだって!」
「犬はオマエだろ!!」

「太臓の仲間に彼女が出来るなんて、信じられないんですけど!」
「しかもその相手が元生徒会長なんて…乙女心は複雑なんですけど!」
「…オマエら…結構酷い話なんですけど。」

『じゃぁ、ここらで一旦トイレ休憩にしましょうか。 その間にこの漫画の主役にも聞いておきましょう!』
「ほら主役だって、百手くん! ハ、ハラワタをぶち撒けて喋った方が印象に残るんじゃないのかな?」
「何で主役なのにこの扱い?! お前の桃はオレの桃だろ! オレにも―
『ハイ、時間が勿体無いので次行きますよー!』
「悠さまーんv これでやっと赤毛の代わりに私をイジってくれますよねーv」
「…伊舞の件で泣いてた翠たまはどこ行ったタマか?」
「幸運香を使ってまで『宏海メモリアル』の作成を続けさせようというのだな。 宏海の覚悟が!『言葉』ではなく『心』で理解したぞ!」
「今は後悔してるがな!!」

「「さぁ、真白木さん、阿久津に一言 言ってやって下さい!」」
「阿久津が誰と付き合ってるとか、そんな事はどうでも良い。 オレが好きなのは―
『どさくさに紛れて、真顔でコクられても対処出来ないので次行きまーす!』

「姉さんを狙う人が1人でも減って嬉しいよ。 さ、姉さん、一緒に帰ろう!」
「玲ちゃん! すみません、弟が失礼な事を… 宏海さん、おめでとうございます。 あの、女の子の夢はお姫様抱っこですから、いつか百手さんにしてあげれば喜んでくれるんじゃないかなって…」
「あ、ああ、ま…ありがとな。」
「姉さんなら、僕がいつでもお姫様抱っこしてあげるよ!!」

「阿久津くん、2人でジョセフとシーザーのコスプレする時は言ってね。 写真撮りたいから!」
「そこはスージーQだろ?!」

「けしからん!! 年上の彼女だと?! 彼女が19歳になれば18禁と付ける意味すらなくなるとは実にけしからん!!」
「オマエはもう間界に帰れ!!」

「…百手さんとは 一度手合わせ願いたいな。」
「ルリーダ?! 戦う理由なんてねえだろ?!」

「確か、百手さんが学園祭で使った衣装、まだ取ってありましたよね?」
「有藤?! そんなにチャイナ服が好きかッ!!」

「あー、阿久津。 職員室の机の上はいつでも空けておくから、百手を呼び出して机の上に立たせてもかまわんぞ。」
「丘?! 何で教師がパンツ見ようとしてんだよ!!」

「パンツじゃなきゃ良いんじゃないのか? 個人的に裸婦デッサンやりたいから呼んでくれ。」
「もっとダメだろ!! 死んでも呼ばねえ!!」
「じゃ、じゃぁ私が代わりに… ポッ」
「学園長の裸なんか誰も見たくねー!!」


その時、講堂の外を、モタとドラクロワと仁露が歩いていた。
「講堂が騒がしいですね… 何かイベントでもやっているんでしょうか?」
「みんな暇だな。」
「…あ! あそこにスピンがいる! スピンー!!」
「へぇ、どこですか? …あ、部長も。 ちょっと行ってみますね。」
2人は講堂へと急ぎ、また、いつもの朝のようにドラクロワが1人残された。
「…何なんだよ、クソッ!」


「太臓係、サボったら承知しないわよ。 …全く、こんな面倒な思いしてまで、何でみんな恋愛なんてしがたるのかしら…」
「あいすちゃんにも分かる時が来るよ。 あ、太臓くーん! 宏海くん達カップルと私達カップルで、今度ダブルデートしましょう!」
「お、おばあちゃん?! 何でドキ高に? 一緒に家に帰りましょう!」

「…亡くなった主人の事思い出したわ… 宏海さん、ウサギとカメのコスプレ衣装とか、悪代官と町娘のコスプレ衣装とか、必要ならいつでも言って下さいね。」
「一生使わねぇ!! て言うか、静さん?! どうしてここに?」
「花子ちゃんを迎えに来たら悠さんに呼ばれて…
あ、花子ちゃん?! 探してたのよ! あ、、、泣いて… 今までの話、聞いてたの?」

「よう、どうした?花子! ふたご姫とプリキュアの扱いの差を考えて悲しくなったのか?」
太臓が、泣いている花子に無神経に声をかけると、

―コツン― と貧乏クジが当たり、

ガッシャーン!!
「いきなり照明が!!」
続けて、よろけて隣に居たスピンにぶつかりそうになり、
『―エロを感知しました!―』
「エロ防止装置も?!」
「それでこそ王子です! そのままそのまま!!」

「小さい子を泣かせるなんて酷いわ!! ううっ…」
「ね、姉さん?! 落ち着いて…」
ドドドドドドドド…の地響きと共に、何故か天井程の高さの波が講堂の中を…
「――アクアラグナまで?!」


――アクアラグナの波が引き、お開きになったところで、宏海は1人で帰宅する事になった。


…あの時の俺の選択は、間違ってたのか…?

つっこみに疲れ、大きな声が出なくなった宏海は心の中で自問した。
帰宅途中に、いつもの公園で 1人ベンチにぐったりと座り、頭を背もたれの上部に乗せて目を閉じる。

しばらくすると、待ち合わせをしていた予備校帰りの矢射子が来た。
「お待たせ!! …どうしたの?」 
「矢射子か…」
目を瞑ったまま、宏海が答える。
「…何だかかなり疲れてるみたい…」
ベンチの、宏海の隣に座る矢射子。
「…学校でちょっと、な…」

…もうため息しか出てこねえ。

「大丈夫?」
「……大丈夫じゃねえ。」
そう言って宏海は、体を起こして、隣に座った矢射子の肩に頭を乗せて、また目を閉じた。
「わ、ちょ、ちょっと、こここ宏海?!」

…あーもう、何だってアイツらはこう 人にちょっかいを出すのが好きなんだか…

「こ、宏海?」
「んー?」
目を閉じたまま、答える宏海。
「疲れてるの?」
「…まーな。」
「た、立てないくらい?」
「んー。 ……しばらくこうさせててくれ。」
「も、もー、しょうがないわね…」
顔を赤らめつつ、肩にかかる重さを喜ぶ矢射子。

「今日ね、予備校でね〜」
「んー。」
「〜〜〜で、〜〜なんだけど……聞いてる?!」
「……」
「ちょっと!!」
「……」
「ね、寝ちゃったの、かな…?」
矢射子の肩に頭を乗せ、目を閉じたまま、規則正しく息をする宏海。
「宏海…寝ちゃった?」
「……」
「寝ちゃった、の、よ…ね?」
「……」
矢射子が瞳を宏海から上空に移すと、木漏れ日の間から見える空は青く高くどこまでも澄んでいた。 時々小鳥のさえずる声も聞こえる。 5月の風が、優しく頬を撫でてゆく。

―ありふれた風景。 でも、かけがえのない瞬間―
『幸せ』って、こういう、何でもない、穏やかな日常の事を言うんだろうな。
矢射子は、寝ている宏海に向かってつぶやいてみた。
「…受験には、失敗しちゃったけど…… でも、宏海とこうして会えるだけでも毎日凄く幸せだなぁって思ってるんだよ、あたし。
宏海……だ、だ、大好き…だ…ょ…」
「…知ってるよ。」

あ、やべ。 つい答えちまった。

「な、な、な、何で起きて聞いてるのよー!! バカーー!!」

幸運香はもう無えけど、大事な物は自分の手で守って行くから、これで良いか。
ニックネーム みつた at 09:38| Comment(3) | 小説◆87章以降
この記事へのコメント






こうやって(と書くのもおこがましいけど)、逢魔市の日常が続いて行くと良いな。
と、願いを込めて。

「もて王」連載終了後の、初めての月曜の午前中の更新に、こだわりましたよ。 (`・ω・´) シャキーン

あ、温子の考えは多分、
百手さんって、いつもリボンしてる人よね→リボンと言ったらシーザーよね→シーザーと一緒にいるのはジョセフよね→2人でコスするならジョセフとシーザーよね!
なんじゃないかと思いました。
Posted by みつた (あとがき) at 2007年05月21日 09:40
はじめまして。古都うさぎと申します。
先日からこちらのサイトにお邪魔させていただいておりましたが、本日とうとう我慢できずにコメントさせていただきました!
「終わらない日常」いいですね!冒頭から笑いが止まりませんでした。インタビューされてる人達の話や宏海のツッコミがいい味出してます。
矢射子と宏海が毎日逢って、宏海が矢射子に甘えてるのが好きです!矢射子の呟きにうっかり答えてる宏海と、それに対する矢射子の照れた様子も可愛くて青春だなーと思いました。
最後の一文に宏海の男らしさを感じてもう萌です!
みつた様の書く宏矢射に萌が止まりませんでした!ご馳走様でした!
Posted by 古都うさぎ at 2007年05月21日 10:13
キャー!! 神が!! 神が降臨なされた!!
はじめまして! 私の方こそ、古都うさぎ様のサイトに日参させて頂いております!
ココでコメント頂くの初めてで、しかも日参しているサイトの方からなんて、照れるやら嬉しいやら…本当にありがとうございます! 私の方こそ、某所の2人視点の小説読んで「ぐわー!ここまで凄いの私には書けねー! でもこんな萌える話読めるなんて幸せ〜〜」とニヤニヤしておりました!
あの、パソの事は何も分かっていない管理人でして…(このサイトのタイトルもちょっとイジったらおかしくなって、直す気力も無いからもうそのまま…)そのうちリンクの箇所も作りますので、リンクさせて頂いてよろしいでしょうか? また改めてメールさせて頂きますが…
コメント、本当にありがとうございました! 凄く励みになります!
Posted by みつた at 2007年05月21日 10:35
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